【2025年5月】道草時間
1年の中でも気持ちの良い季節になりました。
この時期、朝、園の門に立っていると道端で摘んだのかなと思われる小さな草花を大事そうに握りしめて来る子がいます。
タンポポだったり、紫色のホトケノザやヒメオドリコソウだったり、少し大きなオレンジ色の花は近年急にあちらこちらの道端で見かけるようになった外来種ナガミヒナゲシでしょうか…
「先生にあげるの」という子もいれば、お地蔵様の前にそっとお供えする子もいます。
「先生きっと喜ぶよ」「ありがとう。お地蔵様はきれいなお花が好きだからね」と声をかけるとみんな嬉しそうです。
そういえば私自身も小さい頃はよく道端の草花を摘んだものです。
それだけではなく道端にしゃがみ込んでアリが自分より大きな昆虫の羽を巣まで運ぶ様子をいつまでも眺めていたり、石垣の隙間に逃げ込んだトカゲが出てくるのをじっと待ったりしたものです。あの頃、時間はとてもゆっくりと流れていました。
目的地まで休まずまっすぐ向かうのではなく、途中で気の向くままに寄り道することを馬が立ち止まって道端の草を食べることになぞらえて「道草を食う」と言います。
今では私もほとんどの移動を車で、近くでも自転車で済ませるようになり、たまに徒歩で行ってももう「道草を食う」ようなことはなくなりました。
先日あるお母様が「子どもと一緒の時は、時間に余裕がある時だけですけれど、なるべく自転車は使わないで一緒に歩くようにしているんですよ。」と話して下さいました。
「今はこの子にいっぱい道草を食わせたいんですよね」と笑っていらっしゃいましたが、意識して道草を食わせるとは!と感心しました。
そこで私も思い立ち、家から小学校まで昔通った道を数十年ぶりに歩いてみました。
街並みはすっかり変わってしまっていましたが、所々に昔いたずら書きをした覚えのあるコンクリート塀やランドセルを下ろして友達と話し込んだ大きな木陰があの頃のままに残っていて、思わず足を止めてしばしタイムスリップを楽しむことができました。
私も今年は少しでもいいから時間のある時は自分の足で歩いて、もう一度ゆっくりと流れる時間を取り戻したいなと思うのです。