【2025年4月】手でつながる
幼稚園では、子供たちとしばしば「手遊び」が行われます。
みんなが集まった時、先生の指先の動きに合わせて一緒に手を動かすことで子供たちの気持ちが切り替わり、心が集中していきます。
ものを作ったり、掴んだりするほかにも手には様々なはたらきがあります。握手やタッチは人と人の心を繋ぎ、また癒してもくれます。
Eちゃんは、私が直接指導しなければならないちょっとしたできごとがあった次の日。
「Eちゃん、昨日は厳しいこと言っちゃったから私のことは嫌いになっちゃったかな。今日はどう言葉をかけようか…」と緊張している私の前にとことこと自分からやって来て黙ってあやとりの「吊り橋」を作った両手を差し出してきました。
「やろう」という合図です。吊り橋→田んぼ→舟→川…と形を変えていくあやとり紐を互いに見つめて、手と指先だけで遊ぶ短い時間が、たぶんEちゃんなりの「昨日はごめんなさい。」であり、私からの「わかってくれて嬉しいよ。」になったのでした。
私があやとりを覚えたのはたぶんEちゃんと同じくらいの歳の頃だったと思います。
頭ではなく、手が覚えていたあやとりがこうしてこんな時に一人の子供と私をまたつないでくれたのです。
こうした手を通した人との「つながり」は、「幸福感にとって必要不可欠の要素」だと言われます。(「手の治癒力」臨床発達心理士 山口創)
ストレスを癒す生理物質オキシトシンを脳内で作るためには、スキンシップや人に親切にするという行為が有効であることもわかってきたそうです。
ヒトは他人(ひと)と接することで人になると言われます。新しい出会いの4月。
子供たちも私たちもまたたくさんの人と出会い、手をつなぐことができるといいなと思います。