【2024年1月】優曇華(うどんげ)の花
日頃より妙厳寺幼稚園の教育活動にご協力いただきありがとうございます。
1月1日に令和6年能登半島地震が発生いたしました。被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
引き続き子供達の命や安全を守り、成長を後押ししてまいります。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
「虫かご貸してください!」園庭からほとんどの虫が消えた12月になっても虫採りが大好きなH君は毎日虫かごを借りにやってきます。
「今日はカマキリを探すんだ」「今日はカブトムシ見つけるぞ」と、飼育ケースを渡してあげると嬉々として外へと飛び出して行きます。
園庭の茂みに目を凝らし、プランターを一つ一つ持ち上げて下を確認し、ちゃんと何かしら見つけて来るのはさすがです。
冬眠を始めたカメムシ、成虫で越冬するテントウムシ、小さなクモ…発見された虫たちはしばらく生き物コーナーで飼育展示してから元いた場所に逃がしてやるのですが、ある日また虫かごを借りに来たH君に、空になった飼育ケースを渡すとすぐに「中に何かいる!」とケースを持って戻ってきました。
見ても何もいません。「何にもいないけど?」「ほらここ!こっちにも!ほらここにもいるじゃない!」よくよく目を凝らすとプラケースの内側に確かに細い透明な糸のようなものがたくさんぶら下がっています。
「おお!これは、優曇華(うどんげ)の花だ!」
「優曇華の花」というのは、仏教の説話に出てくる三千年に一度しか咲かないと言われる幻の花の名前です。
その正体はクサカゲロウという小さな緑色のカゲロウの卵。
そう言えば数日前にこのケースにはやはり園庭で見つかったクサカゲロウが入れられていたのです。飼われている間に中で卵を産んだのでしょう。
「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ」(サン=テグジュペリ「星の王子さま」より)
こんな季節には、こんな所には、「何もいやしない」そう思い込んでいる者には見つけることのできないものが、この世にはたくさんあるのですね。
クサカゲロウの卵も実は毎年見られるはずのものなのですが、草葉の裏側に密かに産み付けられているので、探そうという気持ちがない人にその透明な細い糸を見つけることは難しいでしょう。「優曇華の花」とはなんと言い得た名前でしょう。
そう言えば私も子どもの頃には何度か見つけたことがありますが、今回H君の心の目のおかげで数十年ぶりに再会することができました。
<写真>産み付けられた優曇華の花=クサカゲロウの卵